「金」の眼鏡で見た おカネの風景

暗号通貨は下がった、金は上がった

 この半月ほど、世界で大きな出来事が相次ぎました。トランプ大統領はカナダやメキシコ、ヨーロッパ(EU)、中国などに関税をかけると脅しています。脅された国々は「こちらも米国に関税をかけるぞ」と対抗しようとしています。

 米国とウクライナは「30日間の停戦」をロシアに示しました。しかし、ロシアはトランプ大統領との首脳会談には前向きですが、停戦案には難色を示し、戦火がおさまる気配はまだ見えません。一方、シリアでは南部で暴動が起き、再び内戦が始まる恐れがあります。

 こういうキナ臭い世界の情況に対して、一部で「デジタルゴールド」とも呼ばれるビットコインなどの暗号通貨と、3000年近く「おカネ」の地位を保ってきた金地金は、どのように動いたのでしょうか。

ビットコインは下がりました。上のグラフを見てください。昨年11月の米国大統領選挙で、暗号通貨を擁護するトランプ氏が当選し、ビットコインは急騰しました。今年の1月には1コインが10万5000ドル(1650万円)まで上昇しましたが、この週末は8万4000ドル(1250万円)に下がり、大統領選挙後の上昇分は、ほぼ帳消しになりました。

 いくつかの理由が指摘されています。トランプ政権は過去の犯罪などから押収した20万近いビットコインを基金に移し、さらに買い増すと報道されましたが、買い増す動きはありません。また、ヘッジファンドなどがビットコインを投資対象に加えましたが、その結果、株式市場との連動性が強まりました。ダウ工業株30種平均は14日までの1週間で1300ドル以上下落しており、ビットコインも連れ安したかたちです。

 最も大きな下落要因は、暗号通貨そのものにあると思います。代表的なビットコインはたしかに「2100万コイン」の供給制限があり、希少価値を保証しているでしょう。しかし、同じように作られた他の暗号通貨が、それこそ雨後のタケノコのように生まれ、現在は2万種類を超えています。暗号通貨の全体をながめると、希少価値を見出すのは困難です。

 盗難被害も絶えません。今年2月にも大手取引所のBybitで約2100億円相当の暗号通貨が盗まれました。北朝鮮系のハッカー集団の関与が疑われているといいますが、大手取引所さえも安全ではないことが明らかになりました。

 では、本物のゴールドである金はどうか。下のグラフをご覧ください。こちらは3月以降、三段跳びのように上昇し、ついに1オンス=3000ドルを超えました。日本での価格を田中貴金属の数字で見ると、1g=1万5515円。1年間で20%余り上がりました。

金の上昇についても、いくつか指摘されています。まず世界の中央銀行の金塊購入が続いています。世界金協会によれば、2022年に急増して初めて年間1000トンを超えましたが、中央銀行の購入は23年、24年と3年連続で1000トンを超え、今年もハイペースで購入が続いています。

 ニューヨークの先物市場COMEXは、金生産国からの輸入に関税がかけられるリスクがあるのと、先物取り引きの精算に必要な金地金が不足すると見て、現物市場があるロンドンや、金精錬会社が集まるスイスから膨大な量の金塊を輸入しています。この動きも続いています。

 この連載の初めのほうでも書きましたが、金は3000年余にわたって同じ価値=購買力を保ち続けており、その市場価格は、紙切れに過ぎないドルやユーロ、円などの法定通貨に対するモノサシの役割を果たしています。つまり金価格が上がるということは、法定通貨の価値=購買力が下がることを意味します。

 米国と日本は空前の借金を抱え、ヨーロッパも経済悪化に苦しんでおり、それぞれが発行するドル、円、ユーロ貨幣が先行き危ういことが、金価格を押し上げる根本の要因かもしれません。(グラフはzerohedge、サイト管理人・清水建宇)

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